2017年7月5日

生前贈与加算とは 重要ポイント!!相続開始前3年以内の贈与に注意

相続などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。この3年以内の財産を加算することを専門的には「生前贈与加算」という言い方をしています。

 
また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。
 
加算される価額の基になる贈与財産の範囲と控除する贈与税額は次のとおりです。

 

1 加算する贈与財産の範囲

被相続人から生前に贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものです。3年以内であれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算します。

したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。
 

2 加算しない贈与財産の範囲

被相続人から生前に贈与された財産であっても、非課税とされる直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、贈与税の課税価格に算入されなかったもの及び贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額は、加算する必要のない財産に該当します。

 
3 控除する贈与税額

控除する贈与税額は、相続税の課税価格に加算された贈与財産に係る贈与税の税額です。ただし、加算税や延滞税の額は含まれません。

 
 
 

【重要ポイント!!】

 

①贈与財産が加算されるのは、相続人に限られます
 このため、例えば相続人にならない孫への贈与については、この生前贈与加算する必要がないため、相続対策などで生前贈与を検討する場合は、孫への贈与は効果的です。特に贈与者が高齢な場合は、専門家として必ず説明しておかなければならない部分です。
孫が相続や遺贈により財産を取得している場合は、生前贈与加算の対象になりますのでご注意ください。

 
 
②相続人であっても相続財産の相続を受けなければ、加算の必要はありません(相続 又は 遺贈により財産を取得した人のみ)
 したがって、相続放棄をした人は、生前贈与加算をする必要がありません。相続対策といえば節税をイメージする方は多いと思いますが、特殊な事情があり、必要なものだけを先に生前贈与して相続時には相続放棄をするという節税とは違う形の相続対策もありますので、相続の相談内容によっては、こういう提案をする場合もあります。
また相続放棄した人であっても生命保険金の受取人に指定されていた場合は、みなし相続財産として相続することになりますので、この場合は生前贈与加算の対象になります。
 
 
③贈与を受けた額が贈与税の基礎控除額以下で贈与税がない場合でも、相続開始前3年内の贈与財産は加算対象です。
 贈与税の非課税の枠である110万円以下の贈与であれば贈与税がかからないため、例えば100万円の贈与をして非課税だったから、相続には関係ないと勘違いしている人がいますが、例え10万円の贈与だとしても生前贈与加算の対象になりますので、注意が必要です。
 
 
④生前贈与加算しなくてもいい贈与もあります
・住宅取得等資金の贈与税の非課税特例を受けた場合で、贈与税が非課税とされた部分の金額は、生前贈与加算は必要ありません。
・贈与税の配偶者控除」の適用を受けた財産で、配偶者控除により控除された金額に相当する部分は、生前贈与加算の対象になりません。
・亡くなった年に”贈与税の配偶者控除”を受ける目的で贈与した財産も、控除される金額に相当する部分は、生前贈与加算の対象になりません。
・教育資金贈与の適用をうけた贈与財産は、生前贈与加算の対象になりません。
・結婚・子育て資金の贈与財産は、生前贈与加算の対象になりません。
 
 
⑤生命保険金のみを受け取った相続人も生前贈与加算の対象になります。
 遺産分割協議によって財産を全く相続しなかった場合でも、生命保険金を取得した場合は、みなし相続によって財産を取得したことになり、生前贈与加算の対象になります。 
 
 
⑥生前贈与加算すべき金額
 生前贈与加算すべき金額は、相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額ですので注意が必要です。相続対策を考える上では、値上がりが期待できる財産は、加算対象になりそうな場合でも積極的に贈与することで節税などの効果が期待できます。
 
 

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