2017年12月26日

【シリーズ87】 事業承継における民法の遺留分の特例の活用(固定合意の場合)~相続発生前の対策/企業オーナー等の対策~

【シリーズ87】 事業承継における民法の遺留分の特例の活用(固定合意の場合)~相続発生前の対策/企業オーナー等の対策~

 

遺留分の価額の算定時期は相続開始時ですが、これでは、後継者が生前贈与を受けた後、自らの努力によって株価を上昇させた場合、その増加分まで遺留分算定基礎財産に算入されてしまい、後継者にとっては自らの努力が報われない結果となってしまいます。

このような問題に対処するために、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律は、「遺留分に関する民法の特例」(以下「民法特例」といいます。)を規定しています。その特例の一つに「固定合意」というものがあります。

「固定合意」とは、後継者が先代経営者からの贈与により取得した当該中小企業の株式の全部又は一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意時における価額とする旨を合意することをいいます。

「固定合意」を行った場合には、後継者が先代経営者から生前贈与を受けた自社株式については、合意時の固定した評価額で、遺留分算定基礎財産に算入し、遺留分減殺請求の計算をします。

 

 

 

効果とリスク

 

<効果>

・先代経営者から贈与を受けた自社株式につき、遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の価額であらかじめ固定できるので、後継者の貢献による株価上昇分は遺留分減殺請求の対象外にできる。

・遺留分放棄制度は各相続人が家庭裁判所で手続をしなければならないが、本特例は後継者が単独で手続ができ、他の相続人の理解を得やすい。

 

<注意>

・民法特例が利用できる中小企業となる要件、旧代表者、後継者の要件を満たさなければならない。

・特例を利用するには、固定合意について推定相続人全員の同意が得られなければならない。

・固定合意時の株式等の価額を専門家が証明し、証明書を合意書に添付して家庭裁判所に提出しなければならない。

・経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を受けなければならない。

 

<リスク>

・合意後、経済産業大臣の確認申請、家庭裁判所の許可が必要になるため、利用に当たっては時間的な余裕が必要となる。

 

 

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