2017年12月25日

【シリーズ86】 事業承継における民法の遺留分の特例の活用(除外合意の場合)~相続発生前の対策/企業オーナー等の対策~

【シリーズ86】 事業承継における民法の遺留分の特例の活用(除外合意の場合)~相続発生前の対策/企業オーナー等の対策~

現経営者が、生前贈与や遺言によって後継者に自社株式を譲渡し、事業承継しようとしても、遺留分減殺請求により、円滑な承継が阻害される場合があります。

このような問題に対処するために、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律は、「遺留分に関する民法の特例」(以下「民法特例」といいます。)を規定しています。その特例の一つに「除外合意」というものがあります。

「除外合意」とは、被相続人である先代経営者の推定相続人全員の合意をもって、後継者が先代経営者から贈与により取得した自社株式の全部又は一部について、その価額を遺留分算定基礎財産に算入しないという内容の定めをすることをいいます。

「除外合意」を行った場合には、後継者が先代経営者から生前贈与を受けた自社株式については、遺留分算定基礎財産に算入されず、遺留分減殺請求の対象外となります。

 

 

 

効果とリスク

 

<効果>

・先代経営者から贈与を受けた自社株式を遺留分算定の基礎財産から除外できるので、後継者は安定した経営ができる。

・株式等が後継者以外の推定相続人に渡ることなく、事業承継の元手である株式等の分散を防ぐことができる。

・「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予」の利用により、贈与税の納税を猶予することが可能である。

・遺留分放棄制度は各相続人が家庭裁判所で手続きをしなければならないが、本特例は後継者が単独で手続きができ、他の相続人の理解を得やすい。

 

<注意>

・民法特例が利用できる中小企業となる要件、旧代表者、後継者の要件を満たさなければならない。

・特例を利用するには、除外合意について推定相続人全員の同意が得られなければならない。

・経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を受けなければならない。

 

<リスク>

・除外合意のみでは他の相続人が納得しない可能性があり、除外合意のみの利用は難しい。

・合意後、経済産業大臣の確認申請、家庭裁判所の許可が必要になるため、利用に当たっては時間的な余裕が必要となる。

 

 

  1. 一覧へ戻る
  1. 一覧へ戻る